嫁入りの染付皿

彼女がお嫁入りにあたり母親から受け継いだ染付の平皿は、お呼ばれした際に銘々皿として食卓にありました。

何度かこの皿で食事を楽しんだことがあり、その度に染付への憧れが募っていったものです。

「あたし、やっちゃったよ...」と連絡があり、まさかこの皿だったときは流石に私も残念な気持ちになり、それから、「あの素敵な皿私が直していいの!?」と緊張しました。

仕上げを金にするか銀にするか随分悩んだあと、経年変化を共にできる銀を彼女は選びましたが、仕上げてから暫く経った姿は、その選択が大正解だったことを静かに教えてくれています。
 


ポットの注ぎ口

ロンドンで暮らしていた頃手に入れたというアンティークのポットは、大容量です。

たっぷりお茶が入れられて、頼もしいかぎり。

ポッキリと割れた注ぎ口は、いい感じに擦れた金彩で、それに合わせて金で仕上げる事にしました。

 

木製のレンゲ

渡辺浩幸さんという木工作家のファンです。

力の抜けた優しい作りの作品が食卓を豊かに魅せてくれるので、自宅ではカトラリーやお皿を毎日愛用しています。

大事に使っているつもりですが、それでも壊れるときがきてしまいました。。

スープを飲むのに欠かせないレンゲが、、先がポキっと割れてしまいました。

「どうすべ. . .」青ざめる顔。。

直します。全然大丈夫。

欠けた欠片は諦めて、漆と地の粉を混ぜたもので成形していきます。

仕上げはあまり目立たせず、自然に違和感ないように、漆の塗り立てにしました。

ちょっと前とは変わっちゃったけど、この先も永く大切に使います。

 


錫(すず)で継ぐ

錫の良いところは、、銀のような酸化による変色が無く安価で手に入る、というところですが、なかなか色も落ち着いていて、私は好きです。粒子が荒めなので、鈍い色味に仕上がります。錫自体とても柔らかい金属なので、仕上りも気持ちふんわり優しいような。。
実家の欠けに欠けた湯呑み。The 普段使い!


金継ぎの教科書

先日、「ゼロからの金継ぎ入門」という書籍が出版されました。

こちらの著者は、私の恩師である伊良原満美さん・中村真さんでして、学生の頃には大変お世話になりました。

実は、大学では金継ぎは教わりませんでした。漆の基本的な技法を学び、自由に作品を作ることのみ。

でも漆を扱っていると、金継ぎを頼まれます。最初はどうやってやろうかしらと、試行錯誤し、自己流で、今まで孤独にやってまいりました。笑

この本は、ありがた〜い教科書です。

初心者の方でも、本漆を使用しての金継ぎに興味があり、始めてみようかしらと思う方には是非おすすめしたいです。

色々な金継ぎの本を見てきましたが、芸大で教えていたお二人の、正しい、間違いない方法が書かれている素晴しい本です。金継ぎの文化を受け継いでいく人にとっては永久保存版となるでしょう。

私の継ぎもより良くなることでしょう。でも、それほど?あながち?私のやり方も間違いではなかったとほっとしています。今後も自信をもって器をなおしていきたいと思います!

 

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銀継ぎ

ちょこっと欠けただけだけど、そこに寂しさが宿ってしまうので、

漆で直してあげると、そこに愛がホワッと灯ります。笑

数ヶ月後の君へ..

あ〜割っちゃった、、ガクっときて、作者に申し訳ない気持ちと、揃いであったのに、、とか、手に入れたときの幸せな気持ちとか、これじゃなきゃだめなのにっ、、とか、いろんな気持ちのあと、

さて、どうやって継いだらより素敵になっちゃうかしら?
この真っ白な器には、何仕上げが合うかな?

と数ヶ月後の姿を想い、いそいそと作業場に向かいます。

そばちょこ

備前焼のそばちょこ

この渋みには磨き銀がよく合うんじゃあるまいか。。

鈍い銀が普段使いの気軽な雰囲気を壊さず、堅気の頑固じいさんのような仕上りになりました。

 

染付け 

ここのところ、古い素敵な染付け皿の依頼が多く、私もついつい欲しくなっちゃいます。

たまに奮発して豆皿など買ったりしますが、憧れの古伊万里などは高くてなかなか手が出ません。

いつか京都の古皿店で、これだっっと思うものを、セットで、清水の舞台から飛び降りるような気持ちなど感じながら、冷や汗流し、手に入れてみたい。

と思いながら、毎年京都に行くものの、見るだけで帰ってくる小者であります。

 

グラス

いつもいつもビールを飲んでいますが、特に気に入りのビアグラスをやってしまいました。

派手にパカッと割れたので、ドンと派手に直しちゃおうと思い、極太ラインで仕上げました。

またこれでビールを美味しく飲めます。

骨董 染付け

益子の骨董屋にて、欠けがあるため安く売られていた染付けの平皿を金継ぎしたら、、

とってもきりりとして、素敵になりました。


ガラスを継ぐ、、

ガラスというのは難しくてですね、、

勿論透けてますから、金で覆った下の漆が角度を変えれば容易に見えてしまうのです。

漆というのは、茶色だったり黒だったりで、接着面の作業的な部分が見えるのはあまり美しくありません。

ですのでガラス製品に関してだけは、漆でなく市販の接着剤を使用します。

接着面に透明な接着剤で金箔を貼ってから、ガラスを合わせることで、どこから見ても断面が金色で美しく仕上がります。 

最終的には漆で割れをなぞって金粉を蒔いて仕上げます。

あまり激しく割れているものは、手を切りそうで怖いのでお受けしていません。

素直にスパッと割れたものや、小さな欠けでしたらやってみます、、

 

おしゃれな湯呑み

大事な湯呑みにヒビが、、と持っていらしたY氏。

私の元にくる壊れた器はみんな、直して使い続けようと大切にされて、幸せ物だなあとつくづく思います。

器を作った作家さんを知っていると尚更、器が手から手へ渡るストーリーを思い、主人公は今傷ついたこの器、、無事に直してご主人の元に返すから安心されたし、というような気持ちです。

派手に割れた湯呑み

とっても渋くて素敵な湯呑みが、、5つに割れ、欠け、ひびが入っておりました。

毎日毎日よーく見ながら作業していると、だんだん愛着が湧いてきてしまいます。。

大変であればあるほど完成した時に、これでサヨナラなんだね、と少し寂しく思います;;

一度壊れてしまいましたが、また永く大切に使われることでしょう。

またなんかあったらいつでもおいでね と送り出します。

 

ヒビ 途中経過

ぱかっと割れずにヒビが入った状態のものは、漆を少しずつ流し隙間を埋めていきます。

毛細管現象で、眼に見えないヒビにまで漆が行き渡ります。

写真はヒビが完全に埋まり、金を蒔く一歩手前の段階です。小さな欠けもあったので、漆と砥の粉を混ぜたもので埋めました。

作業上いっそ割ってしまった方が良い場合もあります。そんなときは、えいやっと割ってから断面に糊漆を塗って組み立てます。割るのもなかなか勇気がいって難しいんですが。。

漆器を継ぐ

アメリカに在住の方からお預かりしていた、朱塗りのお椀を金継ぎしました。

割れが入っていたので、漆に木粉や麻布の繊維を混ぜて粘土のようにした刻苧(こくそ)

を詰めて、金で仕上げました。

 

漆の器は大事に使い込んでいくと、このようにしっとりとした良い艶が出てきます。

継いだところがお椀の歴史に加わって、これからも永く活躍してくれると嬉しいです。

傷は勲章となり、一層堂々としたお椀様。。

 

Soup cup

6ピースに砕けたスープカップを銀継ぎしました。

この器には金より銀の方が合うかなと、それぞれの器の個性に添って考えるのも楽しいこと。

銀で仕上げた場合は、一般の銀製品と同じように経年で黒ずんできますが

それもまた良い味わいとなってきます。

綺麗にしたいときは、シルバークリーナーのような液を綿棒などにとってちょちょいとつけて下さい。

あまりシルバー専用のクロスや歯磨き粉、コンパウンドなどで一生懸命磨くと粉が剥げてきますのでご注意ください。

 

 

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漆仕上げ

金継ぎの仕上げ方には、金属粉を蒔き付ける他に、漆を塗って仕上げる方法があります。

漆を塗って仕上げる場合は、欠損部分を目立たせたくない物や、器のもつ雰囲気に金属が

合わない時などです。

参考に、渋い茶碗の欠けを根来風(黒漆の上に朱漆をのせて研ぎ、摩耗した様子をつくりだす)で

仕上げてみました。こんな普段使いの器には、気取らない漆仕上げも似合うように思います。

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START KINTSUGI!!!

初めまして、、

金継ぎのogaと申します^^

漆を扱っていると、自然とぽつぽつ金継ぎの依頼があるもので、、

正式に(??)看板を提げて、ここにSTART!!しました。

物を大切に永くつかうために、壊れてなお一層美しく修繕するというのは、日本の細部まで神経を

行き渡らせる独特の美意識を感じます。

大事な器が欠けてしまってガクッと肩を落とすことは、よくある事です。

金継ぎは本漆と純金粉を使用します。小さい大きいに関わらず、作業工程が多く完成までに

2〜3ヶ月かかります。買った値段の方が安い、、という事はしょっちゅうですが、

きっとそれぞれの器には値段とは異なる1つだけの価値があります。

まずはお見積をいたしますので、ご検討頂ければと思います。

 

写真は、子供の離乳食用の器。

破片を紛失していたので、漆に木粉を混ぜたもので形作り金粉で仕上げました。